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脳の話

睡眠時無呼吸症候群:Sleep Apnea Syndrome(SAS)

昼間の眠気がひどい、眠気のために物事に集中できない、寝ている時に呼吸が止まっていると言われた、いびきがひどい、熟睡した感じがせず朝すっきり起きられない・・・

このような症状のある場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)とは;
「一晩7時間の睡眠中に、10秒以上の無呼吸が30回以上起こるか、睡眠1時間当たりの無呼吸や低呼吸が5回以上の場合」を言います。

無呼吸(Apnea)とは;
呼吸を全くしない状態のことです。息を吸うことも吐くこともせず、呼吸が完全に止まった状態です。

低呼吸(Hypopnea)とは;
夜間睡眠中に見られる換気量の少ない呼吸のことです。換気量が少ないということは、「呼吸が浅い」ということです。無呼吸の不完全な型で、通常の呼吸の50%以上低下したものを指します。呼吸の深さがいつもの半分以下(気流が半分以下)ということになります。50%未満の場合でも、酸素飽和度(後述)が3%以上低下した場合や、覚醒反応(苦しくて眼が覚める)を伴う場合には低呼吸と言います。

無呼吸低呼吸指数:AHI(Apnea Hypopnea Index)とは;
睡眠1時間当たりの無呼吸および低呼吸の出現回数のことで、SASの重症度を表す指標です。

重症度:軽度AHI=5-15、中等度AHI=15-30、重度AHI=30-45、最重度AHI=45~

酸素飽和度(SpO2;パルスオキシメータで測定するものを言う);
呼吸により肺に、更に肺から血液中に取り込まれた酸素は、その大部分が赤血球中のヘモグロビンに結合して体中の組織に運ばれます。酸素飽和度SpO2 はヘモグロビンの何%が酸素と結合しているのかを示し、正常基準値は94~97%です。

SASの有病率:
一般人口で2~4%と言われます。日本におけるSASの疑いのある方は、200万人以上とも言われ、現在治療(後述のCPAP)を行っている方は約3万人です。

SASの症状:
夜間睡眠中、朝の起床時、日中起きている時の3つに分けます。

  1. 夜間睡眠中の症状;大きないびき、呼吸停止、大きな体動やけいれん、夜間の覚醒
  2. 朝起きた時の症状;頭痛、体がだるい、のどが渇く
  3. 日中の症状;過度の眠気、集中力・記憶力の低下

SASの検査:
 簡易睡眠検査;簡易型在宅無呼吸検査装置でのスクリーニングです。入院しなくても手軽に検査ができるのが最大のメリットです。重症のSASであれば簡易検査で十分に診断できます。当院ではこの簡易検査を行っています。

終夜睡眠ポリソムノグラフ検査(Polysomnography;PSG);
SASの精密検査で、一度の検査で脳波、眼球運動、筋電図、口・鼻の気流、心電図、胸腹部の換気運動、体位、酸素飽和度を検査します。

 簡易睡眠検査でのAHIが40以上で自覚症状の強い場合は、PSG検査を行わなくても後述のCPAP治療の保険適応になります。しかし簡易睡眠検査では、睡眠状態に関する状態が乏しく(脳波、眼球運動、筋電図の検査ができないため)、無呼吸を過小評価してしまう可能性があります。特にAHI<40でも日中の眠気がひどい方の正確な評価は、簡易検査では困難であり、入院してPSG検査を受けることが不可欠になります。

 

SASの治療:
SASは生活習慣病と密接に関係しており、放置すると生命の危険に及ぶこともあります。また、SAS特有の眠気は交通事故を起こす危険もあり、早期に適切な治療をすることが大切です。

SASの合併症:
高血圧、脳梗塞、狭心症・心筋梗塞、糖尿病、脂質代謝異常症、動脈硬化

SASの治療:
原因や検査結果から治療方法を選択します。

マウスピース;
舌の落ち込みを防ぎ、気道を確保するための矯正器具です。

耳鼻咽喉科での治療;
上気道を閉塞しうる病変(扁桃肥大、鼻中隔湾曲、小顎症、ポリープなど)は手術が必要になることがあります。

在宅持続呼吸療法;
SASの患者さんに在宅で実施する呼吸療法のことです。

CPAP:Continuous Positive Airway Pressure(持続陽圧呼吸)

SASの患者さんは舌が落ち込むなどで、気道(上気道)を塞いでしまいます。マスクを装着して陽圧を持続的に加え、閉塞しやすくなっている上気道を強制的に開いて、無呼吸を防ぐための治療がCPAP(しーぱっぷ)です。CPAPはSASの在宅持続呼吸療法の主体です。

CPAPの効果:
日中の過度の眠気の消失、睡眠中のいびきの消失、睡眠中の無呼吸・低呼吸の減少、酸素飽和度低下の改善、夜間覚醒の減少、無呼吸による心拍数・血圧変動の改善。何といっても生活の質(QOL;Quality of Life)の改善が最大の目的です。

CPAP治療を保険診療で行う場合には、月に一度の外来通院が必須で、治療効果の評価を行う必要があります(使用機種にもよりますが、費用はひと月に5000円位です)。

 

健常人の上気道 SAS患者さんの上気道閉塞

イラスト提供;アステラス製薬

 

 

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